エグゼクティブ・サマリー
- 補助金は原則として後払いである。設備代金は先に全額支払い、事業完了後の実績報告と検査を経て入金される。この時間差を織り込まない計画は、採択されても資金繰りで詰まる。
- 多くの制度で共通する最大の落とし穴は「交付決定前に発注・契約・支払いをすると対象外になる」という原則である。急いで発注した1件が、補助金全額を失わせることがある。
- 採択される事業計画は、ロボットの説明書ではない。「解くべき課題→なぜ今→この設備でなければならない理由→定量的な成果→実行体制」という因果の鎖で書かれている。
- 補助金は事務工数を伴う。申請・交付申請・実績報告・取得財産の管理・事業化状況報告まで含めた総工数を見積もり、担当者を確保してから応募する。
- 補助金は目的ではなく手段である。補助金がなければやらない投資は、補助金があってもやらないほうがよい。制度に合わせて要件を歪めた導入は、稼働後に必ず問題化する。
「補助金が取れたら導入しよう」という順序が危ない
ロボット導入の相談で頻繁に出てくるのが「補助金が取れるなら導入したい」という言い方である。気持ちは分かるが、この順序には構造的な危険がある。
補助金には公募期間があり、締切がある。締切から逆算して申請書を書くと、必然的に要件定義より先に見積書が必要になる。見積書を出してもらうには機種を決めなければならない。機種を決めるには、本来ならRX構想策定と要件定義が終わっていなければならない。しかし締切は待ってくれない。
こうして「制度の締切に合わせて、要件が固まらないまま機種と金額を決める」という進め方が生まれる。採択されれば、その決めてしまった仕様のまま導入が進む。稼働後に「思っていたものと違う」となっても、補助対象設備は簡単に入れ替えられない。
補助金は、導入計画を加速する道具としては優秀だが、導入計画の代わりにはならない。正しい順序は次のとおりである。
- 構想と要件を固める(自社の課題と、あるべき姿)
- 投資額と効果を試算する(ROIの考え方)
- 補助金がなくても実施するかを判断する
- 実施すると決めた投資について、使える制度を探す
- 制度の要件に照らして、計画の表現と時期を調整する
ステップ3が要である。補助金の有無で実施可否がひっくり返る投資は、そもそも投資判断として弱い。補助金は回収期間を短縮するものであって、回収できない投資を回収できるようにするものではない。