エグゼクティブ・サマリー
- 中小企業のロボット導入が止まる最大の理由は、技術でも予算でもなく「誰がいつ時間を使うのか」が決まっていないことである。兼務者の空き時間に乗せた導入は、繁忙期に必ず止まる。
- 兼務体制でも回すことはできる。ただし決める人・現場で確かめる人・外部と話す人の三役を分け、それぞれに週あたりの時間を先に確保することが条件になる。
- 最初の一台は「一番困っている工程」ではなく、「止まっても事業が止まらず、効果が数えやすい工程」から選ぶ。一台目の役割は効果を出すことより、自社に導入の型を残すことにある。
- 外部(メーカー・SIer・コーディネーター)に任せてよいのは設計と施工であり、現場の業務条件の言語化・受け入れ判断・定着後の一次対応は自社に残す。ここを丸投げすると、動いているのに使われない機体ができる。
- 投資額が経営に与える重みは大企業より大きい。だからこそ着手前に撤退ラインと見直し時期を決めておく。撤退ラインを持つことが、社長が意思決定しやすくなる最大の材料になる。
ロボット導入の相談を受けていると、相手が大企業か中小企業かで、詰まる場所がまったく違うことに気づく。大企業では部門間の調整や稟議の長さが壁になる。中小企業では、意思決定そのものは速い。社長が「やろう」と言えばその日に決まる。それでも導入が止まる。止まる場所は、決めた後である。
決めた後に手を動かす人がいない。工場長は日々の生産を回しており、現場リーダーは自分も作業に入っている。メーカーからの質問票は机の上に置かれたまま一か月が過ぎ、見積の比較は誰も手をつけず、気づけば補助金の公募期間が終わっている。本稿は、こうした状況にある企業が、専任者を置かずに導入を最後まで進めるための実務手順をまとめたものである。