エグゼクティブ・サマリー
- 「導入したが効果がわからない」の大半は、測定に失敗したのではなく測る前に定義していなかったことに起因する。KPIは導入後に決めるものではなく、要件定義と同時に決めるものである。
- KPIは1本では機能しない。設備KPI(機械は動いたか)/業務KPI(仕事は変わったか)/財務KPI(金額はどう動いたか)/定着KPI(人は使い続けているか)の4層に分け、層をまたいで因果をつなぐ。稼働率だけを追うと、機械は動いているのに効果が出ない状態を説明できない。
- 「稼働率」は6通りに読める言葉である。分母を24時間にするのか、就業時間にするのか、計画稼働時間にするのか。定義を紙に書いていない稼働率は、報告のたびに数字が変わり、議論が定義論争に消える。
- 効果測定の成否は導入前に決まる。ベースラインは導入前にしか取れない。ここを飛ばした案件は、以後どれだけ丁寧に測っても「導入前と比べていくら良くなったか」を永遠に証明できない。
- KPIは監視のためではなく意思決定のためにある。誰が、いつ、どの数字を見て、何を決めるのかまで設計して初めてKPIになる。見る人と決めることが決まっていない指標は、集計の手間だけを増やす。
ロボットを導入して1年ほど経った企業から、よく同じ相談を受ける。「稼働はしている。現場も慣れてきた。ただ、経営から効果を聞かれると答えに詰まる」というものだ。担当者は真面目に運用してきたし、機械も問題なく動いている。それでも数字にならない。
このとき何が起きているかというと、たいてい2つのうちどちらかである。ひとつは、導入前の状態を測っていないため比較対象がないこと。もうひとつは、稼働率のような設備側の数字は取れているのに、それが業務や金額にどうつながるのかを最初に定義していないことだ。どちらも、導入後の努力では取り返せない。効果測定の勝負は、機械が来る前についている。
RobiZyはロボットを売らないNPO法人であり、中立のコーディネーターとして導入する側に立つ。売り手はカタログ性能を語るが、その性能が自社のどの数字をどう動かすのかまでは踏み込めない。踏み込むと責任範囲が広がるからである。本稿は、導入7工程の②要件定義の段階でKPIをどう置き、⑥定着化・⑦運用でどう回すかを、実務の手順として示す。