エグゼクティブ・サマリー
- ロボット導入の議論は「入れるまで」に集中し、入れた後に効果が出なかった機体をどう扱うかを決める枠組みがない。判断されないまま置かれた機体は、保守費と現場の不信を同時に生み続ける。
- 選択肢は撤退だけではない。撤退・更新(リプレース)・改修(使い方を変える)の三択であり、混同したまま議論すると「もう少し様子を見る」という結論に必ず着地する。
- 判断に必要なのは意見ではなく四つの実測値——稼働実績・単位あたり原価・保守の可用性・業務側の変化である。この四つが取れていない状態では、撤退も更新も正当化できない。
- 撤退基準は、撤退が問題になってから作るのでは遅い。導入時に「いつ・誰が・何を見て見直すか」を決めておくことが、後から効く唯一の予防策である。
- 撤収・更新の実務は機体の搬出では終わらない。データ・周辺設備・現場業務・契約・資産の五領域を片付けて、はじめて完了する。ここを飛ばすと次の導入が同じ場所で詰まる。
ロボット導入の相談を受けていると、「新しく入れたい」という相談と同じくらい、「入れたが使っていない機体がある」という相談に出会う。稼働していないのに保守契約は続いており、現場に置き場所を取られ、それでも撤去の話は誰からも出ない。理由を聞くと、たいてい同じ答えが返ってくる。「やめると言い出す人がいない」。
これは現場の怠慢ではなく、判断の枠組みが用意されていないことによる構造的な問題である。導入は稟議も体制も手順もあるが、やめる・入れ替えるという意思決定には、起案者も基準も会議体もない。本稿では、この空白を埋めるための実務的な判断手順を整理する。