建設現場のロボット・自動化

Construction·業種別·約12分·全7ページ

エグゼクティブ・サマリー

  • 建設現場の自動化が工場の自動化と決定的に違うのは、作業環境が毎日変わることである。工場のラインは同じ場所で同じ動作を繰り返すが、建設現場は工程が進むたびに床も壁も動線も変わる。「固定された環境を前提に組んだ自動化」の発想をそのまま持ち込むと、翌週には使えなくなる。
  • 導入検討は機種からではなく、作業の分解から始める。一つの職種の仕事を「段取り・移動・本作業・確認・片付け」に割り、そのうち機械に渡せる部分だけを切り出す。職種まるごとを置き換えようとした検討は、ほぼ例外なく行き詰まる。
  • 現場に入れやすい領域は経験上五つに集約される。墨出し、資材搬送、鉄筋・溶接などの反復作業、内装ボードなどの重量物取り付け、点検・測量である。共通するのは、作業内容が図面で事前に定義でき、かつ人がやると単純に重い・遠い・危ないという条件を満たす点にある。
  • 最大の障壁は技術ではなく体制と契約である。元請・専門工事会社・機材リース・オペレーターの誰がロボットを保有し、誰が動かし、事故時に誰が責任を負うかが決まらないまま現場に持ち込むと、実証で止まる。ここは技術検証より先に整理すべき論点である。
  • 効果は「人が減った」ではなく、歩掛り(単位数量あたりの人時)と工期で語る。建設は原価管理の単位が工事種別ごとの数量と人工で組まれているため、この単位に合わせて効果を出さないと、次の現場の予算に載らない。

建設業の人手不足は、他業種の人手不足とは性質が異なる。若手の入職が細り、熟練の技能者が引退していくなかで、時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、これまで工期の帳尻を合わせてきた「休日出勤と長時間労働」という調整弁が使えなくなった。同じ工事を、より少ない人数で、より短い労働時間で仕上げなければならない。この構造から逃げる方法は、生産性を上げる以外にない。

そこでロボットや自動化機械への期待が高まるのだが、実際に現場へ持ち込んだ企業の多くが同じところでつまずく。展示会で見た機械を借りて、一つの現場で試して、「面白かったが、うちの現場では使いどころがなかった」で終わる。これは機械の性能の問題ではなく、検討の入り口を間違えているために起きる。本稿では、建設現場という特殊な環境で自動化を成立させるために、何をどの順序で決めるべきかを整理する。

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