エグゼクティブ・サマリー
- コンソーシアム型導入とは、一社では担えない範囲を、複数の主体が役割を分けて一つのプロジェクトとして進める方式である。仲良く集まることが目的ではなく、単独では成立しない案件を成立させるための構造である。
- 向くのは、①投資が単独では回収できない ②必要な技術が一社に揃わない ③現場が複数事業者にまたがるのいずれかに当てはまる案件だ。逆に、一社で完結できる案件をコンソーシアムにすると、意思決定が遅くなるだけで何の得もない。
- 成否を分ける最大の要素は技術ではなく、意思決定構造である。「全員で決める」と決めた瞬間に、そのプロジェクトは何も決められなくなる。運営会議・実務会議・作業部会の三層に分け、各層の決定権限を文書で固定する。
- 費用分担は「頭割り」を避ける。受益に比例させるか、拠出の形(現金/現物/工数)を分けるかのどちらかにしないと、後から必ず不公平感が噴き出す。
- 事務局は参加者の一社が兼務しない方がよい。その一社の利害が調整に混じるからである。中立の第三者が事務局を持つと、揉め事の九割は起きる前に消える。
なぜ一社で進められない案件があるのか
ロボット導入の相談を受けていると、一定の割合で「この案件は、この会社一社では絶対に終わらない」と分かるものがある。たとえば、地域の複数の中小製造業が同じ工程で同じ人手不足に困っているが、一社あたりの生産量では自動化装置の投資が回収できない、という場合。あるいは、倉庫の自動化を進めたいが、荷主・物流事業者・倉庫オーナーが別会社で、誰が投資して誰が便益を得るのかが噛み合わない、という場合。
こうした案件で「まず自社でできることから」と一社に閉じてしまうと、たいていは小さなPoCで止まる。動かない技術のせいではなく、投資判断が成立する規模に届かないからだ。詳しくはロボット導入の失敗パターンと回避でも触れたが、止まる理由の多くは技術の外側にある。
コンソーシアム型は、この構造的な行き詰まりに対する回答である。ただし、複数主体を集めた瞬間に、一社では起きなかった別種の難しさが発生する。本稿は、その難しさをプロジェクトマネジメントの技術として扱う。