エグゼクティブ・サマリー
- 外観検査AIの失敗は、ほぼ例外なくモデルではなく前工程で起きる。 「何を不良と呼ぶか」が言語化されておらず、撮像条件が日によって変わる状態のまま学習に進むと、どれだけ高性能なアルゴリズムを持ってきても現場精度は出ない。
- 最初にやるべきは限度見本の作り直しである。 ベテランが感覚で分けている良品/不良品の境界を、実物と画像で並べ、検査員間で判定が割れるサンプルを洗い出す。ここで判定が割れる比率が、そのままAIの上限精度を決める。
- 不良データは「集める」ものではなく「作る」ものと考える。 実工程の不良率が0.1%なら、必要枚数を自然発生で待つと年単位になる。過去不良の保管品、意図的に作った疑似不良、良品のみで学習する異常検知の三つを組み合わせて立ち上げる。
- 精度は「正解率」で語らない。 見逃し(流出)と過検出(良品を弾く)はコストの桁が違う。流出1件の損害額と、過検出1%あたりの再検査工数を金額に置き換え、その合計が最小になる点で閾値を決める。
- 全数を無人で判定させる構成は、最初から狙わない。 AIが白黒つけられる領域だけ自動化し、グレーゾーンだけ人に回す二段構えにすれば、精度が7〜8割の段階でも検査工数は大きく減らせる。ここが最短で効果が出る現実解である。
外観検査は、ロボット・自動化のテーマの中でも「効果が金額で見えやすい」領域である。検査は人手が張り付き、熟練度に依存し、深夜帯や繁忙期に品質が揺れる。だからこそAI化の期待が集まり、そして期待の大きさに比べて実装の到達率が低い。RobiZyがユーザー企業から受ける相談でも、外観検査は「一度試して止まっている」割合が高いテーマである。本稿は、そのつまずきどころを工程順に開き、構想段階から運用までの判断材料を示す。