エグゼクティブ・サマリー
- ロボットは設置すれば使われるわけではない。現場の手順・判断・責任範囲が変わるということであり、そこを設計しなければ運用は回らない。
- 導入直後には必ず「立ち上げの谷」がある。期待どおりに動かない数週間〜数か月をどう越えるかで、定着するかどうかが決まる。
- 運用設計は導入後に考えるものではない。構想・要件定義の段階で決めておくべき項目が7つある。
- 現場の抵抗は「わがまま」ではなく情報である。抵抗の中身を分解すると、たいてい設計の欠陥を指している。
- 効果測定のKPIは、導入前に測定方法まで決めておく。導入前の実測値がないと、効果は永遠に証明できない。
なぜ導入したロボットが使われなくなるのか
「半年前に導入したロボットが、いまは隅に置かれている」——この状態に至る経路は、驚くほど定型的である。
稼働開始直後、ロボットは想定どおりには動かない。パラメータが現場に合っていない、想定外の対象物でエラーが出る、既存の動線と干渉する。これは正常な現象であり、どんな導入でも起きる。問題はその先だ。
エラーが出たとき、現場の担当者はマニュアルを見る。しかし復旧手順が書かれていない、あるいは書かれていても分かりにくい。ベンダーに連絡すると「明日伺います」と言われる。その間、業務は止められないので、手作業に切り替える。この「切り替え」が一度でも起きると、現場は手作業のほうが確実だと学習する。
数回それが繰り返されると、ロボットは使われなくなる。技術的には解決可能な問題であっても、心理的に元へ戻せなくなる。そして「ロボットは使えない」という結論が社内に定着し、次の投資提案が通らなくなる。
この経路は、運用設計で断ち切れる。