ロボットビジネスの始め方——一社で立ち上げようとしない

Business Design·事業・投資·約11分·全9ページ
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エグゼクティブ・サマリー

  • ロボットビジネスへの参入で最初に詰まるのは技術ではない。案件がどこにあるか分からないことである。
  • ロボット導入は、機体・周辺設備・システム連携・施工・運用が別々の会社になるコンソーシアム型が標準形である。一社で完結する構造ではない。
  • 参入ポジションは5類型——メーカー/SIer/コーディネーター/運用事業者/部材・要素技術。求められる能力と収益構造が全く異なる。
  • 実績ゼロの初期突破は、単独受注ではなくコンソーシアムの一員としての参画が現実的な入口になる。
  • 収益モデルは売り切りだけでは伸びない。導入時収益と継続収益の二階建てを最初から設計する。

参入検討企業が直面する4つの壁

ロボット関連事業への参入相談を受けるとき、詰まっているポイントはたいてい次の4つのどれかである。

壁①:案件がどこにあるか分からない

技術も体制もある。しかし、実際にロボットを導入したい企業がどこにいて、いまどの検討段階にいるのかが見えない。展示会に出展しても、来場するのは同業他社と情報収集段階の担当者ばかりで、具体的な案件につながらない。

これは営業努力の問題ではなく、情報の非対称性の問題である。ロボット導入の検討は社内で静かに始まり、要件が固まって初めて外部に出る。外部に出た時点では、すでに特定ベンダーとの関係ができていることが多い。

壁②:一社で完結しない

受注できたとしても、自社だけでは納められない。機体は作れるが搬送設備は作れない、システム連携ができない、施工業者を持っていない、運用まで面倒を見られない——どこかが欠ける。

壁③:実績がないと選ばれない

発注者は実績を見る。しかし実績は受注しないと作れない。この循環をどこで断ち切るかが、参入初期の最大の課題である。

壁④:収益モデルが読めない

ロボットを売って終わりにすると、案件ごとの一発勝負になる。継続収益がなければ、事業として積み上がらない。しかし保守や運用で稼ぐには、それを担う体制が要る。

参入ポジションの5類型

まず、ロボットビジネスのバリューチェーンにおける自社の立ち位置を決める必要がある。5つの類型があり、必要な能力も収益構造も大きく異なる。

① メーカー(機体・ロボット本体)

必要な能力:機構設計、制御、量産、認証対応、安全規格への準拠 初期投資:大。開発費、金型、認証取得、在庫 収益構造:機体販売+保守部品。台数が出て初めて成立する 難所:開発期間が長く、市場が立ち上がる前に資金が尽きるリスク。用途特化型で先に確実な市場を押さえるのが定石

② SIer(システムインテグレータ)

必要な能力:要件定義、システム連携、機器選定、据付調整、統合テスト 初期投資:中。技術者の採用・育成が主 収益構造:導入プロジェクトの受託(設計・構築費)+保守 難所:技術者の確保。ロボットと業務システムの両方が分かる人材は市場に少ない

③ コーディネーター(導入支援・PM)

必要な能力:業務理解、構想策定、要件定義、ベンダーネットワーク、プロジェクトマネジメント 初期投資:小。人材が資本 収益構造:コンサルティング/PM費用。案件ごとの役務提供 難所:中立性の担保と、実績・信頼の蓄積。特定メーカー寄りと見られた時点で価値が落ちる

④ 運用事業者

必要な能力:現場運用、保守、監視、一次対応、教育 初期投資:中。人員と拠点の配置 収益構造月額の運用・保守契約=ストック収益 難所:拠点網の構築。地理的にカバーできる範囲が事業規模の上限になる

⑤ 部材・要素技術

必要な能力:センサ、アクチュエータ、ソフトウェア、AIモデルなどの専門技術 初期投資:大〜中。研究開発が中心 収益構造:部材販売、ライセンス、OEM供給 難所:完成品メーカーへの採用が生命線。単独では市場に出られない

自社はどこに立つか

判断の目安は次のとおりである。

  • 既存事業で現場に入り込んでいる(設備保守、人材派遣、物流受託など)→ ④運用事業者、③コーディネーター
  • システム開発の能力がある → ②SIer
  • 製造・機構設計の能力がある → ①メーカー、⑤部材
  • 業務コンサルの能力がある → ③コーディネーター

複数にまたがることも可能だが、最初は1つに絞るほうが立ち上がりが速い。すべてをやろうとする提案は、発注者から見て信頼しにくい。

コンソーシアム型という構造を理解する

ロボット導入案件の標準形は、複数社の組み合わせである。典型的な構成は次のようになる。

役割担う会社
構想策定・要件定義・PMコーディネーター
ロボット本体メーカー
システム設計・統合SIer
周辺設備・搬送機器設備メーカー
施工・据付工事業者
運用・保守運用事業者

この構造には2つの含意がある。

含意1:単独受注を狙うと機会が減る。 発注者は「全部やってくれる会社」を探しているのではなく、「全体をまとめてくれる誰か」を探している。自社が全部をやる必要はない。

含意2:組める相手がいるかどうかが受注条件になる。 技術力があっても、コンソーシアムを組める相手がいなければ案件に入れない。逆に、組める相手がいれば、自社の得意領域だけで参画できる。

つまり、ネットワークが事業資産になる。

実績ゼロの初期突破

実績がないと選ばれない、という循環をどう断つか。現実的な手は3つある。

手1:コンソーシアムの一員として参画する

自社が主契約者になるのではなく、実績のある会社が主契約を取った案件に、得意領域で参画する。ここで作った実績が、次の単独受注の根拠になる。

この入口に立つには、コンソーシアムを組成する側と接点があることが条件になる。

手2:自社または関連会社の現場で実証する

自社の工場・倉庫・店舗にまず導入し、それを実績とする。導入企業としての経験は、提案する側に回ったときに強い説得力を持つ。「うちでもやりました」は、事例集より効く。

手3:限定領域で一番になる

「ロボット全般」ではなく、特定の業種・特定の工程に絞る。「食品工場の惣菜盛付」「園芸ハウスの搬送」といった粒度まで絞ると、その領域では指名される存在になれる。市場は小さくなるが、実績ゼロからの立ち上げでは有効である。

収益モデル——二階建てで設計する

売り切り型だけでは、事業は積み上がらない。導入時収益と継続収益の二階建てを、最初から設計しておく。

一階:導入時収益(フロー)

  • 構想策定・要件定義の役務費用
  • PoC実施費用
  • 機体・設備の販売
  • 設計・構築・据付の受託

二階:継続収益(ストック)

  • 年間保守契約(定期点検、部品、駆けつけ対応)
  • 運用受託(監視、一次対応、日常メンテナンス)
  • ソフトウェア/ライセンス(管理システム、更新)
  • 教育・改善支援(定期レビュー、追加教育)

二階部分は、単価は小さいが件数が積み上がる。導入10件を超えたあたりから、事業の安定性が変わる。

そして二階を取るには、導入時に運用まで見ている必要がある。「売って終わり」の契約設計をすると、後から運用契約を取りにいくのは難しい。最初の提案書に運用まで含めることが、収益設計の実務である。

立ち上げの実務手順

  1. ポジションを1つ決める(5類型のどれか)
  2. 対象を絞る(業種×工程の粒度まで)
  3. 組める相手を見つける(自社に欠けている役割を持つ企業)
  4. 最初の1件をコンソーシアムで取る(主契約でなくてよい)
  5. その1件を事例化する(数字つきで)
  6. 二階(継続収益)を設計に入れる
  7. 横展開する(同業種の他社へ)

このうち3が最も難しい。企業単体の営業活動では、組める相手には出会いにくい。ユーザー企業とベンダーが同席する場に継続的に身を置くことが、最も効率のよい方法である。

一社で立ち上げようとしない

ロボットビジネスは、構造的に単独では成立しにくい。案件はコンソーシアムで動き、必要な能力は複数社に分散し、ユーザーの実課題は外からは見えない。

したがって参入の第一歩は、技術開発でも営業体制の構築でもなく、その構造の中に入ることである。

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